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爆走ストルイピンカ

□ 覆面作家企画6  □

覆面作家企画6 Dブロック感想

D01 とある罪人の告白

一存による死刑フリーパスを得てしまった義人の葛藤。「やろうと思えばできる」が「やらねばならぬ」と同義になってしまう倫理の重圧。
でも最後に問題がはぐらかされた印象を拭えない。「死刑の是非」と似た問題が突き詰められていくと思ったのに、誤審・冤罪の問題に話がスライドしてしまった。
その二つが不可分だなんて言わないで。現実世界ではそうかも知れないが、小説の中では、設定ひとつで造作もなく分けられるし、分けてそれぞれに議論を尽くすべき事柄だと思います。


D02 顔 

少し込み入っているが、描写に力のある凄艶な話。
一頭の優れた牡をめぐって母娘が組打ちって、野生のキツネの世界ではそう珍しくもなさそう。豊穣のシンボルになるくらいだから多情で多産かと思いきや、けっこう二人とも一途で思い詰めるタチ。
話を複雑にするのが、「母=面に宿るスピリット」という設定。本来、祭儀において、ヒトはそういうモノの十全な 依り代となって合一できるように努める。面も神楽も舞も潔斎も、それを助けるためのもの。
ところがこのスピリットには、すでに「母」という別の実体を持っていたから、思わぬところで中身VSイレモノという遭遇戦が起こってしまう。
そして問題の「面」は最初、母に属するものだったが、長いこと娘の手元にあるうちに、娘のペルソナを表すものに変わってしまったのだろう。


D03 Gore 青き死神

日没がもっと大きな終わりと重なる。こういう話に自分は脆い。
軍や政府の特殊任務といったものを背景としながら、被服の詳細や花のイメージなど、むしろ女子力がとても高い。このバランスの持ち主は、私の勘では茅さん。
ちなみに鳳仙花は英語でタッチミーノット。復活したキリストが使徒トマスにのたまったという由緒あるフレーズ。


D04 アマヤドリズム

うーん、手練れですね、このかたは。唸ってしまった。音楽なんかビタ一文知らない自分にも、何か分かるもんなー。彼女、バスのエンジン音もよく耳で聞いている。さすが絶対音感。
そして何が素晴らしいといって、この話の筋立ての分かりやすさ、シンプルさ。こういう企画への提出作のお手本のようです。自分なんか参加するたび「オマエの話、分かんねーよ」と言われる。
ところで三人がセッションした時代劇のテーマって、絶対「暴れん坊将軍」だと思う。ついでに思ったけど、この覆面企画にも、いろんな年恰好と出自の人がいる。


D05記憶

福田里香先生の「フード理論」ではないけれど、出だし、そのタイミングでタバコを吸う若い女性って、不幸な結末を辿る予感が濃厚に漂う。この話ではタバコ、象徴という以上の実体的な伏線をも担うのだが。
宗教でも医療でも、何なら司法でもよい。心のケアは大事です。


D06 ひだね  

寒すぎて食べるにも事欠くようだと、ひとは他者を思いやる余裕がなくなるし、暖かくなり人口が増え、人の往来が盛んになると、今度はそれが、いさかい・殺し合いを招き寄せる。
何ともペシミスティックな世界「観」。それは魔女様も嘆きます。
最適値というのがあるのでしょう。人間、ここが頭の使い処ですよ。


D07 Waiting For The Fire Never Come

「ワイルド・バンチ」って、サム・ペキンパー監督の西部劇としか知らなかったけど、今ググってみると実在の元ネタがあったのか。構成員の名前がそこから採られている。深い。
個人的ポイントはガトリング砲。南北戦争に投入された筈だが、モノの役には立ったんでしたか。


D08 火童子 

E04酔夢春秋の「鄙びた感」に対し、こちらは人間など立ち入れない、遥かな神話世界の叙事詩。
文体もE04と対比してみると、それぞれ特徴的で面白い。
干ばつに際して、「秘策のような、最後の切り札を、期待していた」のはどちらなのだろう。結末を知ったうえで読み返すと、どちらとも読めるところが恐ろしい。


D09 焦げた着物の少女

タイトルの禍々しさは、Dブロックでも最高。
「本当に怖いのは人間だよ」とかのシャラくさい定型句があるけれど、たしかに吉信は怖い。
嘘でもいいから、寺で修行してるとか、神社の息子だとか名乗ってほしい。あるいはご先祖が同じなら、「君たちの一族はそんなことも忘れてしまったのかね」とか。
あのノリで、素の個人に来られると、自動的にBL感が流れてしまう。それこそが作者様の狙いなのかも知れないが。


D10 灼かれた者

これまでに上がっているご感想の中で、弟のいる姉族さんからの申告は何件か見受けられました。対して自分は姉のいる弟です。「成長してからも及びつづける、幼少時の姉の影響力」って、認める男は少ない。しかし自分は率直に認める。そういうものはある。
そこで自分が想像する、加賀というキャラの背景。彼にもまたキツめの姉がいて、大海同様の目に遭ってきた。その影響を何とか抑え込んで、男らしい自分を形成してきたのに、今そんな話を持ち込まれて、見透かされたような気がした。それを打ち消すための殊更な悪びれ方。
いや、まあその辺は想像にすぎないのだけど、ただひとつ大事なのは、大海が、自らの好みで加賀という人格に惚れ、自らの意思で死を選んだということ。どこの誰も無理強いなんかしていない。痛々しくはあるけれど、それもまた彼自身が表現した生き方のひとつではないのか。身内だろうが兄弟だろうが所詮は別人格。その他人が後から「借り」とか「償い」とか言いだしても、もう彼の帳簿は正しい手続きでシメられたあと。


D11葬送 

気丈さが、子供の目には「キツイ」と映るこういう女性、本当にいそう。曖昧に続いた大人の現実の関係に、焚火の炎が決着をつける。とてもいい話だし上手い。
惜しむらくは、字数のため、テキストの多くが、錯綜する人間関係の説明に追われている。そこはたぶん作者様ご自身が一番お分かりのはず。


D12業火

 悪所の婀娜な空気が、吹き渡る潮風が、夜空を背景に燃え落ちる館が、走馬灯のように何度も巡り来る。めくるめく不思議な感覚。
「美しく優しく儚げで、実際に幸薄い肉親のお姉さん」を描いた「日本お姉さん文学」の系譜にも連なる。




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Date:2014/09/23
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